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25話 行方不明の婚約者・王国を揺るがす捜索作戦

Penulis: みみっく
last update Terakhir Diperbarui: 2025-07-06 07:00:00

「……それにしても、ずいぶん長くないですか? 少し様子を見てきますわ」

 ミリアは不安げに眉をひそめながら立ち上がった。言葉には出さなかったものの、心の奥に、かすかな胸騒ぎが広がり始めていた。

 ――変なことになっていなければいいけれど。まさか、置いていかれたなんて思ってませんわよね……?

 そんな心配を抱えながら、ミリアは武器屋へと向かう。昼間の今は、冒険者たちが依頼に出ている時間帯。店内には他の客の姿はなかった。

「先ほど、こちらにいらした方は?」

 ミリアが店主に声をかける。微かに焦りを帯びた声色だった。

「ええ、だいぶ前に出て行かれましたよ。かなり慌てた様子で、キョロキョロしながらこの先の方へ走って行かれました。もしかしたら、置いていかれたと勘違いされたんじゃないですかね?」

 店主の説明に、ミリアの胸がきゅっと締めつけられる。

 ――やっぱり……! 誤解させてしまったんですのね……っ!

「ユウヤ様の護衛は、どうなっているのです?」

 ミリアは鋭い視線で護衛たちを睨みつけた。問い詰められた護衛たちは、言い訳すらできず、沈黙するしかなかった。

「な、何をしていたのですか!? ユウヤ様は、わたくしにとって大切な婚約者なのですよ!  護衛をつけないだなんて……本当に、使えない護衛ですわねっ! いますぐ探し出しなさい。もし何かあったら――絶対に許しませんから!」

 ミリアの怒声が店中に響き渡る。その叫びには、ユウヤを失ってしまうかもしれないという焦燥と、護衛たちへの激しい苛立ちがにじんでいた。

 護衛たちは顔を青ざめさせたまま、慌てて捜索に向かっていく。  王国の兵士も事の重大さを察し、応援を呼びに走り、同時に国王への報告へと向かった。

「こんなに護衛がいるのに……誰ひとり、ユウヤ様について行っていないなんて……」

 ミリアは不安と苛立ちに胸を締めつけられ、自らの無力さを噛みしめた。  数時間が経ってもユウヤの行方は知れず、焦りはさらに募っていく。彼女は王国兵を呼びつけ、ユウヤの捜索を最優先事項として命じた。もはやその命令は、王国の法律に等しい絶対的なものだった。

 心配になった王も現場に駆けつけたが、目にしたのは、大通りを埋め尽くすほどの兵士たちの姿だった。まるで戦の直前かと見紛う光景に、王の顔はみるみるうちに青ざめ、額には脂汗が滲み始める。

 ――帝国の皇女の婚約者が、この王都で行方不明。この一件が外交問題へ発展すれば、王国は無事では済まされない。その恐怖こそが、王を突き動かしていた。

「王国の治安は、どうなっているのかしら……?」

 ミリアは王を鋭く睨みつけた。その視線はまるで、罪人を裁くような冷たさと威圧感に満ちている。

「す、すみません……」

 王は圧に押されるように、頭を垂れた。

「治癒薬がどうとか言う前に、まずは治安の心配をなさるべきですわっ。  金儲けばかりに気を取られているから、こんなことになるのですわよ!」

 ミリアの言葉は、王の胸に鋭く突き刺さる。権力欲と怠慢を、的確に――そして容赦なく指摘されたのだ。

「おっしゃる通りです……申し訳ありません。全力で探し出させます」

「当然ですわ。何かあった場合……どうなるか、お分かりですわよね?」

「は、はい……」

 王は青ざめ、声を震わせながら答えた。

 こうして、平民の捜索隊の指揮を執るという前代未聞の捜索が始まった。大通りには兵士たちが次々と動員され、その物々しい様子に、戦でも始まるのかと慌てて家に帰る者、怯えて立ちすくむ者――街中が騒然となっていった。

脱出計画と新たな誤解

 盗賊達は、兵の動きがいつもと違うことを察知し、王都を出る準備をしていた。ユウヤ達を馬車3台に分けて入れ、王城を出ようとしていた。

「お前ら黙って大人しくしてろよ!騒いだら殺すからな!」

盗賊の一人が脅しつけてきた。俺の隣には治してあげた女の子が数人集まっていた。彼女たちは不安そうに俺を見上げている。

「おにぃちゃん……こわいよぉ」

小さな女の子が俺の服の裾を掴んだ。

「大丈夫」

俺は優しく答えた。

「これからどうなるのかなぁ……」

「強くて頼りになるお姉さんがいるから探し出してくれるんじゃないかな」

「ホント?」

「それに俺も黙って拐われるつもりは無いし……」

「何をするの?」

「別に暴れたりはしないから安心して」

「はぁい……」

王都を出る為の検査があり、その列に並んでいた。馬車に乗せて堂々と運び出すってことは奴隷制度があるってことか……それか兵士に協力者がいるのか?この国の裏側は、想像以上に深いのかもしれない。

兵士達が荷物検査にやってきた。

「荷物は何だ?」

兵士が馬車の幌を開けた。

「はい。奴隷の運搬でございます」

盗賊の一人が答えた。

「中を見せろ」

「はい……ただの奴隷ですよ」

兵士が馬車の幌の中を覗くと、俺と目が合ったので助けを求めてみた。

「あの~俺、拐われたんですけど~」

そう言って、国王から貰った王族の紋章入りのナイフを見せた。兵士は一瞬固まって驚いていたが、直ぐに我に返ると表情を硬くし、外の兵に声を掛けた。

「おい!こっちだ!」

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